男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「刺繍は大変ですもの。ところで昨晩の夜会には陛下だけのご出席でしたのね? 皆さま、ミシェルさまをひと目見たいと楽しみにしていましたのよ」

「シャプリエ公爵夫人、夜会はどんなところですか?」
 

特に夜会へ行きたいと思わないが、どのような所なのかは気になっている。


「美味しい食事とお酒、そしてダンスでしょうか。会話も楽しみますわね。陛下は色々な女性と踊ったりしますから、ミシェルさまは見たくないかもしれませんわ。昨晩もイヴォンヌさまと……」

「イヴォンヌさまと……?」
 

ミシェルは首を傾げてシャプリエ夫人を見つめる。


「ダンスはイヴォンヌさまとしか陛下はされませんでしたわ。他のご令嬢方は羨ましそうで。ご結婚が決まってもまだチャンスがあると、陛下の妻になりたいご令嬢はたくさんおりますから」
 

ミシェルの瞳が不安げに揺れる。


「陛下はミシェルさまのご身分が低いので、イヴォンヌさまも娶るおつもりではないかと思いますの。大臣たちから色々と言われているようですし」

「えっ……?」

「あらっ! 噂をすればイヴォンヌさまですわ」
 

侍女を従えて、イヴォンヌが東屋へやって来た。オレンジ色のドレスを着たイヴォンヌはバラのような色香を漂わせている。


< 227 / 272 >

この作品をシェア

pagetop