男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ミシェルさま、今日もレッスンでしたのね。お忙しいこと。ご機嫌いかが? シャプリエ公爵夫人」
 

イヴォンヌは優雅に膝を折ってふたりに挨拶する。


「イヴォンヌさまこそ、昨晩は遅かったのでは?」
 
シャプリエ公爵夫人は口元を隠して小さく笑う。

ふたりの会話を聞きながら、ミシェルは上の空になった。


(クロードさまが……イヴォンヌさまも娶る……?)
 

わが国の国王は三人まで娶れることになっている。シャプリエ公爵夫人の話を世間知らずのミシェルは信じてしまう。


「――さま、ミシェルさま?」
 

イヴォンヌの呼びかけにぼんやり考え事をしていたミシェルはハッとなる。


「ぁ……もうしわけありません。なんの話を……?」

「ミシェルさま、陛下に夜会へ行きたいと甘えてみたらよろしいかと」
 

シャプリエ公爵夫人がイヴォンヌに同意を求めるように彼女に視線を向ける。


「ほら、噂をすれば陛下がいらっしゃいましたわ」
 

イヴォンヌが座る後方にこちらへやって来るクロードの姿があった。シャプリエ公爵夫人とイヴォンヌが椅子から立ち上がり、ミシェルも慌てて彼女たちにならう。


「陛下」

「クロードさま」
 

シャプリエ公爵夫人とイヴォンヌがドレスを持って優雅に膝を折る。
 
クロードは挨拶するふたりに軽く頷き、ミシェルの前まで来る。


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