男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「私は……」

「夜会に興味があるとおっしゃられたではないですか」
 

恥ずかしくないダンスやマナーを習得してからでいいと言おうとしたのだが、イヴォンヌに遮られる。


「たしか、今日はドローヌ伯爵のところで夜会がありますわ。陛下が行かれたらさぞかしお喜びになることかと」
 

ドローヌ伯爵は位こそ公爵より劣るが、田舎に広大な領地を所有しており、かなりの資産家だ。ドローヌ伯爵の子息はパスカルと旧友で、クロードもよく知っている。

娘はパスカルの妻の座を狙っていた。

普段は田舎の領地で暮らし、社交界シーズンになると、町の屋敷に滞在する一族だ。

ミシェルは今日夜会があると聞いて、即座に首を横に振る。


「クロードさま、興味はありますが私はダンスもマナーもまだまだです。クロードさまが恥ずかしいと思われないようになってからご一緒したいと思います」
 
そう言ってからミシェルはハッとなる。


(クロードさまは私が恥ずかしいから、これまでも誘わなかったんだ……)
 

そう思ってしまい、顔を上げられなくなる。


「わかった。今夜は出かけるつもりはなかったが、お前を自慢しに行こう」

「えっ!?」


思わず顔を上げたミシェルにクロードは微笑む。


「お前を恥ずかしいなどとまったく思っていないぞ。夜会も経験しておくといい。天使のようなお前を男たちに見せたくなかったのだが」
 

クロードは困惑しているミシェルの頬を優しく撫でる。


「まあ! 私たちあてられてしまいましたわ」
 

シャプリエ公爵夫人はそう言ってイヴォンヌに笑いかけた。

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