男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「陛下、私の夜会にご出席くださり光栄でございます。お美しいご婚約者さまもご一緒で、感激の至りでございます。今宵はごゆっくり楽しんでください」

へつらうような笑みを浮かべ、ドローヌ伯爵は国王一行を屋敷の中へ案内した。
 
大広間は上流貴族の屋敷よりも広く、豪華な料理に楽団もおり、羽振りのよさがうかがえる。
 
貴賓席に座った途端、貴族たちが挨拶にやって来る。

誰もがミシェルと話したがるが、話す余裕のない彼女はやっとの笑みを浮かべ、クロードに会話を任せた。
 
ようやく挨拶の人が切れると、クロードは誘う。


「ミシェル、踊るか?」

「まだダンスは……」
 

大広間の中央フロアに出たら、注目をさらに浴びてしまうだろう。

貴族たちはミシェルがどんな人物なのか見極めようとしており、始終視線を感じている。
 
そしてもうひとり注目されている女性がいた。イヴォンヌだ。

貴族たちはイヴォンヌが数々の求婚を断り、国王を慕っていることは周知の沙汰で、村娘にかっさらわれて哀れな女性と、噂をたてられている。

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