男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ではもう少し場に慣れたところで踊ろう」

「はい!」
 

ミシェルが微笑んだところへヴァ―ノンがクロードに耳打ちした。


「アベル、ミシェルを頼む。少し席を外す」
 

クロードが椅子から立ち、ヴァ―ノンを伴い、席を離れた。
 
残されたミシェルは不安そうな顔になり、後ろに立つアベルを見上げる。
 
そこへシャプリエ公爵夫人がミシェルの元へやって来た。ミシェルは椅子から立ち上がる。


「ミシェルさま、輝かんばかりにお美しいこと。楽しんでおられますか? 主人を紹介させてください」
 

落ち着いた深緑色のドレスを着たシャプリエ公爵夫人の隣に、茶色のジュストコール姿の五十代くらいの男性がいる。


「ミシェルさま、妻から聞いていた通り可憐なお方でございます」

「ミシェル・ブロンダンです。よ、よろしくおねがいいたします」 

「可愛らしいお方で、見事な髪ですな」
 

シャプリエ公爵は目尻を下げて、ミシェルから目が離せない様子。


「ミシェルさまを友人たちに紹介したいの。アベル、いいかしら?」
 

シャプリエ公爵夫人は後ろで見守るアベルに声をかける。


「では私も」

「アベル侍従、大丈夫です。ここにいてください。すぐに戻ります」
 

ミシェルはアベルに大丈夫だというように笑みを向けて、シャプリエ公爵夫妻と席を離れた。

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