男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「な、なんてことを……もうしわけございません!」


ドローヌ伯爵は磨かれた床に膝をつき詫びる。

そんな光景にいたたまれなくなったミシェルはクロードのジュストコールの袖をそっと引っ張る。

「クロードさま……」
 

招待客の貴族たちは興味津々で注目していた。


「ミシェルは黙っているんだ」
 

ジュストコールに触れるミシェルの手を数回優しく撫でるクロードだが、ドローヌ伯爵を冷たい視線を向けている。


「ドローヌ伯爵、娘を甘やかしすぎたようだな。一年間娘は王都に戻ることは許さない。明日、領地へ送れ」
 

アリスは喉の奥から「ひっ!」と小さな悲鳴を漏らした。父親であるドローヌ伯爵は受け止めた。


「は、はいっ! そのようにいたします!」
 

ミシェルは困惑していた。


(王室の物を粗末にしたせいだけど……)
 

力なく首を垂れるアリスにミシェルは同情してしまう。


「ミシェル、先に馬車へ行って。すぐに行く」
 

クロードはミシェルをアベルに任せて離れていく。


「ミシェルさま、行きましょう」
 
アベルに促されミシェルは出口の方へ向かう。


< 238 / 272 >

この作品をシェア

pagetop