男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
イヴォンヌの侍女は東屋の外に出て少し離れたところに立った。

使用人数人が料理の乗った大きな盆を運び入れ、国王とイヴォンヌの前に置いて行く。
 
王城料理人が自ら給仕を務める。

ミシェルは麗しいイヴォンヌの顔に見惚れ、アベルの話を思い出していた。


(なんて綺麗な人なの……。あの方が一番有力な陛下のお妃候補……)
 

イヴォンヌの動作はとても優雅なもので、貴族の令嬢はすべてこのように洗練されているのだろうかと考えてしまう。
 
クロードに語りかける声から言葉遣いまで美しい。


(この女性を愛さない殿方なんているはずがないわ)
 

自分とはるかに違う貴族の令嬢だ。だが見惚れてしまうが、羨ましいとは思わない。ここまで洗練されたのは並大抵の苦労ではなさそうだ。
 
たまの休みに帰宅した祖父から、貴族の子息・令嬢は優秀なたくさんの教師をつけられ、毎日自由がないほどだと聞いている。


(私はずっと自由に生活してきた。お城で働きたいけれど、自由のない貴族の令嬢になりたいとは思わないわ)

国王はイヴォンヌに対して、静かで優しく語りかけるような口調だった。
 
彫刻のような整った横顔に笑みが浮かぶ。

ミシェルはクロードが笑ったところを見たことがなかった。その美麗な笑顔に胸がドクンと高鳴った。




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