男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
走って王城へ戻ったミシェルだが、慣れない構造にすっかり迷子になっていた。


「あれ……? もしかしたらこの棟じゃない……?」
 

どこも廊下は似たようなもので、ミシェルは青ざめながらキョロキョロしていた。そこへふたりの衛兵が通りがかり、彼らに駆け寄ったミシェルは国王の住居を訪ねる。


「あの、国王陛下の私室がある棟へは、どちらへ行けばいいでしょうか?」
 

衛兵らはミシェルの言葉に一瞬で表情を硬くした。


「お前、怪しい奴だな。侍従服を着ているくせに、なぜ聞く!?」

「僕は昨日やって来たばかりなんです」


ミシェルは疑いをかける衛兵に声を低めに堂々と言う。


「おい、掴まえろ!」

「ええっ!?」
 

衛兵ふたりの手が伸びて、ミシェルの腕を強く掴んだ。


「話してくださいっ! 僕は東屋にいらっしゃる陛下に頼まれたんです!」
 

振りほどこうにも屈強な体格の持ち主の衛兵に、華奢なミシェルが力で勝てるはずがなく暴れるほどに体力がなくなっていく。


「東屋? お前、国王の居場所も確認していたんだな! 間者か!?」
 

あらぬ疑いをかけられてミシェルは困り果てた。


「それほど疑うのなら国王陛下の元へ連れて行ってください」

「な、なにを! 我々のような者が直接お言葉などかけられるか!」


衛兵の言い分にミシェルは「じゃあどうすればいいの?」と切れそうになった。


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