男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
(落ち着くのよ。私。あ!)


「東屋では騎士団の……ブノアさまもおいででした! あの方にお聞きください!」
 

彼らが国王陛下にお目通りできないのなら、騎士団の団長に尋ねてもらうしかない。


(どうしよう……今頃、まだ戻ってこないと、国王陛下はお怒りになっているかもしれない)


迷っていた時間もあり、そしてこの不運……。


「お願いです! 国王陛下の命令なんです! 早くしなければ僕を掴まえているあなた方も大変なことになりますよ」
 

これははったりではあるが、そうしないとこの衛兵たちはブノアさまの元へ連れて行ってくれないだろうと、ミシェルは強く言い切った。


「う、うむ……仕方がない。行くか」
 

衛兵ふたりは顔を見合わせ頷くと、ミシェルの腕を掴んだまま歩き始めた。

 
ミシェルの両脇をたくましい衛兵が腕を掴み、歩きづらいといったらない。もう少しで浮いてしまいそうなくらいだ。
 
いい加減に手を離してほしい……そう思った時――。


「お前なにをしていた!?」
 
怒鳴る男の声がした。
 
背の高い衛兵のせいで、その男がどこにいるのか見えないミシェルは顔をあちこち動かした。
 

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