男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
そこへ鋭い目つきのヴァ―ノンが三人の前に立った。


「どこでサボっていた!? 陛下がご立腹だぞ」

「ブノアさま! 彼らが僕のことを間者だと言って、離してくれないのです!」
 

ふたりの衛兵は第一騎士団の団長を前にして驚き、ミシェルの腕を掴む手の力が緩まる。

衛兵に腕を離されたが、ヴァ―ノンから「陛下がご立腹」だと聞いて、ミシェルの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。


(どうしよう……おじいちゃん、来て早々こんなことに……)


「お前たちは行っていい」
 

ヴァ―ノンに命令され、衛兵はそそくさと去っていく。


「申し訳ありません。迷ってしまい、彼らに聞いたらこんなことに……」

「早く来い!」


有無を言わさずヴァ―ノンの後を付いて行くしかなく、ミシェルは肩をガックリ落としながら歩みを進めた。
 
 

東屋にはアベルがいた。ヴァ―ノンの後ろにいるミシェルの姿にホッと安堵した様子だ。
 
クロードとイヴォンヌの前には、食事の最後に出されるお茶とケーキが置かれている。
 
それを見てやはりずいぶん時間が過ぎてしまっていたことがわかり、ミシェルはうな垂れる思いだ。


「陛下、この者は間者だと衛兵に間違われて捕まっておりました」

「国王陛下、申し訳ありません!」
 

ミシェルはその場に膝を付いて、床に頭をつけてひれ伏す。

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