男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「は、はいっ!」


ミシェルは立ち上がり、走り出したヴァ―ノンを追いかけた。

立った時に、アベルの心配そうな顔が目に入ったミシェルだが、ヴァ―ノンに置いて行かれないように全速力で走るしかない。


(は、速いっ!)
 

鍛えた身体の第一騎士団団長はものすごい速さでミシェルを置いて行く。

ミシェルは一生懸命走るが、すでに息が切れて呼吸が苦しい。胸をリボンで締めつけているせいもあり、乱れる呼吸をなんとか堪え、城の中へ入った。
 
階段を三階まで走り、国王陛下の私室の前に立っているヴァ―ノンが見えてきた。


「っ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 

壁に腕を組んで寄りかかっているヴァ―ノンは、息を切らすミシェルに呆れているような顔つきだ。


「まだ一回目だ。お前、体力がなさすぎじゃないか?」

「……こ、ゴホッ」


話そうとすると咳が出てさらに苦しくなるミシェルだ。


「まあいい。さっさと行け。もう道はわかっただろう?」
 

ミシェルは必死に呼吸を整えながら、コクコクと頷き、元来た道を駆け出した。
 
ひとりで走るようになってからはゆっくり目になり、苦しさも先ほどではなくなった。今のミシェルは早く十往復が終わるのを目標に走るしかなかった。



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