男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「へ、へ、陛下! も、申し訳ございませんっ! 下ろしてくださいっ!」
 

目と目が合ってしまい、いてもたってもいられずミシェルはクロードの腕の中で身体を動かした。


「動くな!」
 

ミシェルが動いても、クロードはふらつくことなく階段を下りている。


「で、ですがっ」

庶民の自分がわが国の国王に抱き上げられて運ばれるわけにはいかない。ミシェルは思わず物申したが――。


「黙れ!」
 

クロードはそれだけ強く言い、部屋に向かった。困惑しっぱなしなのはミシェルだけでなく、部屋へ案内役のアベルもだ。

国王の顔が近すぎるミシェルの心臓がドキドキ暴れはじめている。こんな風に異性から抱き上げられたことがない。


(私は男、私は男……絶対にバレてはいけない)


ロドルフの部屋の扉が開き、ミシェルはベッドに寝かされる。だが、弾かれたように起き上がる。


「陛下、申し訳ございませんでした!」


床に膝を付いて謝るミシェルだ。


「アベル、今日からフランツの食事を増やせ。男とは思えないほど華奢ではないか」
 

ミシェルは女だとバレやしないか、激しい動悸を抑えようと必死だ。


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