男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「かしこまりました!」


 頭を下げるアベルだが、ミシェルは顔を上げられなかった。


(バレていないよね……?)


「お前、早く横になれ」
 

クロードの命令に頭を垂れていたミシェルはビクッと肩を跳ねさせてしまう。


「も、もう大丈夫です。仕事をします」

「命令が聞けないのか? 顔を上げろ」
 

クロードは以上にビクビクしている侍従見習いに眉根を寄せる。

一方、「顔を上げろ」と言われたミシェルは上げられずにいた。このおどおどした瞳を見られたら一瞬でバレてしまうだろう。


(もうっ、この際……)
 

ミシェルは顔を上げた瞬間、身体をふらつかせうずくまる。その様子にクロードは驚き、フランツの腕を持ち上げてベッドに座らせた。


「まだ回復していないようだ。寝ていろ。アベル、もう少し様子を見て戻らなければ侍医に見せろ。私は執務室へ行く」

「かしこまりました」


アベルは低い姿勢で承るのを見たクロードは顔を顰めたまま部屋を出て行った。


「フランツ、大丈夫か? 横になったほうがいい」


扉が閉まってすぐにアベルがベッド横に立つ。
 
ミシェルは言われた通りに身体を横たえる。


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