男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「まあまあ、お父さん。いったいどうしてそんな事に? 中に入って話を聞くわ」


マリアンヌは父親が家の中へ入りやすいように扉を手で押さえた。ミシェルとロドルフが入り、扉を閉める前にまだ止まっている馬車にマリアンヌは目を留めた。

(あら……? 馬車はどうしてお城へ戻らないの?)

いつもならばロドルフを下ろすと去っていく馬車にマリアンヌは首を傾げる。馬車は家の入口に止められたままだ。


「ミシェル、話がある」

祖父の口調から良い事ではないように思えたミシェルだ。


居間のソファに祖父を座らせたミシェルは台所へ行き、温かいお茶を淹れて戻った。


「おじいちゃん、疲れているみたい。お茶を飲んで」
 

ミシェルはトレーを抱えながら祖父の対面のソファに腰を下ろした。隣には母がいる。


「マリー、フランツはいつ戻って来る?」

「あと二十日は戻ってこないわ」

「それでは遅い!」


ロドルフは居ても立っても居られない様子で足の怪我もかまわず立ち上がる。


「お父さん、落ち着いて。いきなりどうしたの?」

 
唐突に聞かれ、マリアンヌが困惑気味に答える。


「どうすれば……」

 
マリアンヌの問いかけは耳に入らないようなロドルフは顎に手をやる。
 
ミシェルとマリアンヌは当惑しながら顔を見合わせた。


「よし! こうすればいい!」


ロドルフは乱暴にソファに腰を下ろした。


「お父さん、足の怪我に注意してくださいな。こうすればいいって、いったいどうしたのですか?」
 

マリアンヌは父親を気遣う。


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