男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
執務室へ入ったクロードは颯爽とした足取りで執務机まで行き、椅子に腰を下ろす。

 
ふと自分の手を見つめ、ギュッと握ってからフッと笑みを漏らす。


「バカな。あの者は男だ」
 

先ほど抱き上げた侍従見習いの感触が離れない。クロードは頭を左右に振った。
 
男にしては抱き上げた時、ずっしりした重さではなく、まじまじと見た顔は女のように綺麗だった。
 
そこへ静かに扉が叩かれた。


トントン――。


「入れ」

クロードの合図にヴァ―ノンが姿を見せた。扉のところで一礼して、クロードに近づく。


「陛下、あの侍従見習いは大丈夫でしたか?」

「私は無理をさせたのだろうか……?」
 

クロードの形のいい唇からため息が漏れる。そんな国王の表情は珍しい。


「綺麗な顔をしておりますが、男なのですからあれくらい問題ないかと思いますが?」
 

ヴァ―ノンは侍従見習いの顔を思い出して、そう助言するが、目の前の国王は上の空といった様子だ。
 
憂いのあるクロードの横顔を見ながら、ヴァ―ノンは先を続ける。



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