男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「なにがあるかわからない世の中、侍従見習いでも体力をつけておく必要があるかと思います。咄嗟に陛下をお守りできるようでなければ侍従としては失格です」

「ヴァ―ノン、侍従はそのためにいるのではない。あくまでも私の世話係だ」
 

ブノワ第一騎士団長の言っていることはわかるが、国王の自分の方がはるかにフランツより強く、身を守れるだろう。

実際、第一騎士団長であるヴァ―ノンとでさえ互角に戦える自信があるほど鍛錬しているクロードだ。

そこまで頭の中で考えたクロードはハッとなった。


(私はなにを考えているんだ? 毒味係りも兼ねている侍従だというのに。私は国王だ)
 

生まれた時から国王となる者は周りの犠牲を厭わずに学べと言われ続けてきた。
 
国王の使命は他国の侵略から国を守ること。民が平和に暮らせること。自分に仕える者は駒に過ぎない。

目の前にいるヴァ―ノンでさえも。
 
そう思っても、歴代の国王のように冷酷無慈悲な性格ではないクロードはそれが苦痛に感じる時がある。
 
十年前には隣国と約半年の戦争があった。

その時、クロードは十五歳。国民を守るために兵士たちと一緒に戦いたかったが、王位継承第一位のクロードはそれが叶わなかった。

< 42 / 272 >

この作品をシェア

pagetop