男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「陛下、侍従でも見習いでも料理係でも、体力があるに越したことはありません。定期的に鍛えてはいかがでしょう?」

「定期的に鍛える?」
 

ヴァ―ノンの提案にクロードのスッと意志の強そうな眉の片方が上がる。


「はい。侍従見習いのあの様子では何をやらせても持久力がなさそうですから。根性はあるようですが」

「今は身体を休めるのが先決だろう。その件は後日」

「御意」


ヴァ―ノンはクロードに頭を下げて、執務室を出て行った。




「――ンツ、フランツ」
 
軽く身体を揺り起こされて、ミシェルはゆっくり目を開けた。彼女の水色の瞳は心配気なアベルを映している。
 
ミシェルはこの状況が一瞬わからなかったが、ハッとなって勢いよく身体を起こした。


「驚かせてしまったかい?」

「い、いいえ! ぼ、僕ずいぶん眠ってしまったみたいで……」


窓の外は暗闇だ。


「いや、いいんだよ。一度昼食を持ってきて起こしたんだが、目を覚まさなかったんで寝させておいたんだよ」
 

ミシェルは喉の奥から絞るような小さな声を上げた。


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