男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
アベルがお茶を淹れ終えた。


「ぼ、僕が持って行ってもいいですか?」
 

昨日アベルに迷惑をかけてしまい、少しでも彼に負担がかからないようにしようと思っている。


「ああ、頼めるかい?」
 

ミシェルの進んでやる気持ちを尊重し、アベルは快諾する。


「ありがとうございます」
 

ミシェルは花が描かれた美しいトレーに、高価なティーセットをのせてクロードの元へ向かう。
 
国王にお茶を持っていくことくらい至極簡単だと思っていた。だが凛々しい国王に近づく一歩一歩の足が震えてくる。


(どうして……? 私……)
 

たくましい腕に抱き上げられた昨日のことを思い出すミシェルだ。なぜか心臓もドキドキ高鳴ってきてトレーを持つ手が微かに震えてくる。


(落ち着いて。落ち着くのっ)
 

ふと視線を感じて見た先にクロードの瞳とぶつかる。
 
見られていたことに慌てそうになるミシェルだが、なんとか国王の元までやって来た。
 
ミシェルは恭しく一礼してから、カップとソーサーを持って国王の前のテーブルへ置こうとした。

その時――。


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