男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
国王の食事を執務室へ運び終えて、自分たちもお腹を満たしたのち、再び私室へ向かう。

国王陛下の私室の掃除だ。
 
寝室、談話室、居間と、かなり広い。毎日の掃除は夕方までかかってしまう。

その途中に昼食や、陛下の着替えを要する時にはその時間も取られる。
 
思ったより精神的にも大変だが、重労働でもあるミシェルは思った。


(年取ったおじいちゃんがこんなことをしていたなんて……)
 
大変な作業にミシェルは祖父を想い、胸を痛めた。


(だからあと一ヵ月。おじいちゃんの苦労を無駄に出来ない。私たちにいい暮らしをさせようと頑張ってくれていたのだから、今度は私ががんばらないと!)
 

談話室の花瓶などの調度品を丁寧に拭き掃除しながら、ミシェルは自分に活を入れた。


「フランツ。そこはいいから、陛下の寝室の寝具類を換えてくれないか。リネン類は廊下を出た左の部屋の棚にある。私もここを終わらせたらすぐに行くから」
 

アベルは艶やかな床を磨いていた。


「わかりました!」
 

ミシェルは廊下を出て左の部屋へ入りリネン類を抱え、隣の寝室へ向かった。
 
国王陛下の寝室のベッドは四柱式で、エメラルドグリーン色をした美しい絹の布がかけられている。
 
< 50 / 272 >

この作品をシェア

pagetop