男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「あららら……そんなことを……おじいさまがあなたにやらせるなんてよほどのことだわね」

「我が家の死活問題なので……」

「心配だわ。でももうやり遂げるしかないわね」

「はい。今日はのんびり町をぶらぶらしたいなって思って。窮屈なこの格好から女の子に戻りたいので、着替えさせてもらってもいい?」


ミシェルは懸念を拭いされないマーサに頼む。


「ええ。もちろんよ。二階の部屋で着替えなさい」

「マーサ、ありがとう!」
 

ミシェルは笑顔で頭を下げた。

黄色のドレスに着替えたミシェルは鏡の前でクルッと回った。膝より少し長いドレスがふんわりと舞う。
 
それからミシェルは鏡を覗き込む。
 
茶色の長い髪に空色の瞳。いつものミシェルとは違うが、胸の膨らみを締めつけられない女の子の姿がやっぱり楽だ。

支度を終えたミシェルは下へ行った。


「ミシェル、少し早いけど、お昼を食べて行きなさい」
 

マーサが豆とトマトを煮込んだスープと丸いパンを運んできて、中央の十人くらいが座れるテーブルの端の席に置く。


「マーサ、ありがとう」
 

ミシェルは木の椅子を引いて腰を下ろした。


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