男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
次の瞬間、ミシェルの空色の瞳が大きくなる。


(や、やっぱり、陛下っ!?)
 

目の前の男はミシェルが仕える国王にそっくりだった。しかし身なりは町の裕福な男が着るような服装だ。


「おや、ミシェルったら、クロードがあまりにいい男だから声も出ないのね」


マーサはミシェルの困惑を、目の前の男が素敵だから驚いていると受け取ったようだ。
 
クロードはちぎったパンを持ったまま、ポカンとしている女の子を見ている。


(どうかバレませんように……)
 

もともと国王は自分の顔をじっくり見ているわけではないだろう。


「ミシェル、クロードは伯爵家のお方だけど、とても気さくなんだよ。時々食べに来てくれるのさ」


(マーサは伯爵家の人だというけれど、目の前に男性は間違いなく陛下だと思う。双子でない限り、こんなに似ている人がいるとは思えない。でも私の顔はわからないみたいだし……)
 

マーサの紹介にミシェルはいつものように振る舞おうと、にっこり笑みを浮かべる。


「クロードさま、私はミシェルです」


国王が会っているのはあくまでもシルバーブロンドのフランツだ。挙動不審にならないようにミシェルは明るい表情でクロードに名乗った。


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