男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「でも、私が男装してバレたりでもしたら……? 大変なことになるわ。フランツが一ヵ月後に勤めるのではいけないの?」

「それはわかっておる。しかし、侍従になりたい者は限りなくいる。一ヵ月後、フランツが戻っても侍従にはなれないだろう」

「一ヵ月後には必ず孫が勤めますと、国王陛下に理由を話して――」


マリアンヌの言葉にミシェルは必死に頷く。


「こんなことで国王陛下を煩わせることなどできん! クロードさまはお忙しいのだ。一ヵ月も待っていられない!」

「おじいちゃん……」

「一ヵ月、お前が侍従見習いをすればいいのだ。それが過ぎたら、病気を理由にやめるんだ。そうすればこの土地にずっと住んでいられる。お前たちもここを出て他の土地に行きたくないだろう? 今なら私の孫、ブロンダン家の一員として優先的に侍従見習いに就けるんだ」


ロドルフは素晴らしい提案だとばかりに頷き、ミシェルが淹れたお茶を飲んで乾いた喉を潤す。


「身の回りの世話をするのに、女だって気づかれない……?」

「ああ。お忙しい国王陛下は気づきもしないだろう。見習いは先輩侍従の補佐をする役目だ。王城の作法も知らない若造は先輩を見ながら仕事を覚えていくのだ」

そんな風に自信をもって言われたら自分に出来る気がしてくるミシェルだ。

(私がお城で働ける……)


「お父さん、ミシェルには――」


マリアンヌはやはり無謀な計画だと口を開こうとしたところで、ミシェルが立ち上がる。


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