男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
照れを隠すようにミシェルは大きく頭を左右に振ると、マーサが大きな声で笑う。


「ミシェルったら、恥ずかしいみたい。あ、呼ばれたわ。ゆっくり食べるのよ」
 

マーサは呼んだ客のほうへ行ってしまった。
 
ミシェルはマーサの後姿を追っていつまでも見ていた。正体がわからない男性が目の前にいるから、落ち着かないせいだ。


「この後はどこへ行くんだ?」

「えっ?」
 

クロードに話しかけられて、ビクッと肩を跳ねらせるミシェルだ。


「食べたらどうするんだ?」

「え……っと……町をぶらぶらしようかと……三ヵ月ぶりなんです」

(そんなことを聞いてどうするの?)
 

ミシェルは当惑しながら、ふわふわの卵ケーキをちぎって口に運ぶ。動揺を隠さなければと必死だ。


「町をぶらぶら……私も一緒に行動していいか?」
 

クロードは魅力的な笑みを浮かべて、ミシェルを見ている。


「ご、ご用はないんですか……?」

「特にない。今日は私も町でゆっくりしようと思っていたところだ」

(陛下は……城を出ているはず……やっぱり陛下なの? ううん、こんな感じじゃないもの。いつもは冷たい雰囲気を纏っている。きっと別人だわ。それならご一緒しても……)
 

ミシェルは色々考えてしまいすぐに返事が出来なかった。


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