男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「私、やるわ!」
 

ここでの暮らしは単調で、なにかしたいと思っており、王城に興味もあったミシェルだ。ロドルフの口添えで、王城での仕事を頼もうとしていたところだ。


男装をして約一ヵ月の間、侍従見習いをすることなどわけない。ほとぼりが冷めたところで、今度はミシェルになって、城での別の仕事に就けたらいいと思った。


「ミシェル!」


マリアンヌは目を大きくして驚くが、ロドルフは満足そうに頷く。


「やはりミシェルは思い切りがいい。フランツより活発な性格だからな。なに、うまく行く」

「お父さん、国王を騙すことになるのよ? 重罪だわ」
 

生真面目な性格のマリアンヌは恐ろしいとばかりに身を震わせる。


「それも考えたが……お前はここを離れ、不自由な生活になってもいいのか? エレナにも金を渡してやれなくなるぞ? このままでは土地を離れて貧乏な生活を送ることになる」

「お父さん……」


フランツが訪ねている叔母とは、マリアンヌの妹で身体が弱く療養中である。結婚したが十年前に戦争で旦那を亡くし、働くことも出来ない妹にマリアンヌはお金を工面していた。


「お母さん、大丈夫よ。私やるわ! そうしなければエレナ叔母さんが困るのよ? 一ヵ月くらいなら大丈夫」
 

事の重大さに青ざめている母親の肩にミシェルは手を置いて強く言い切る。 


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