男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ミシェル……」


諦めた表情を浮かべるマリアンヌはミシェルの頭を胸に引き寄せて抱きしめた。


「そうと決まったら、ミシェルすぐに支度をしなさい。フランツの余所行きの服を着て、髪は後ろでひとつに結ぶんだ」
 

馬車をいつまでも待たせておくわけにはいかないと、ロドルフは不自由な足で立ってミシェルを急かす。
 
ミシェルはフランツの部屋へ行き、王城へ行っても恥ずかしくない服を選ぶ。
 
フランツは男性にしては小柄で、ミシェルと握り拳ほどしか身長差がない。まだ十八歳、まだ伸びるであろう。


「これと、これ……あ、靴も」
 

ミシェルは必要な物を腕いっぱいに抱え込んで隣の自室へ入る。


「胸を平らに見せないとダメだから……」
 

自分の部屋になにかあっただろうかと、引き出しの中を探す。手に触れたのはウエストを締める水色のリボンだ。幅のあるサテン生地で長さも厚みもある。
 
ミシェルは着ていた綿モスリンのドレスを脱いで、たった今見つけたサテン生地で胸の膨らみが目立たないようにきつく身体に巻き付けていく。
 
清潔な白いシャツと黒いズボン、襟に刺繍されているグレーの上着を羽織る。上着はウエストから切り替えがあり、丈はお尻が隠れる長さだ。身につけたものすべてが少し緩いが問題ないだろう。


< 8 / 272 >

この作品をシェア

pagetop