男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「そうだ。この者は女だ」


クロードが重大なことをさも簡単そうにサラッと口にし、驚きの声を上げたのはアベルだ。


「フ、フランツがじょ、女性でございますか!?」
 

腰を抜かしそうなアベルにクロードは知らなかったのだとわかった。


「侍医、早く娘を楽にさせてくれ。私は部屋を出る。もしもその者が目覚めたら、私は知らないことにしてくれ。女だということは侍医と娘のふたりだけの秘密に」

「御意」
 

侍医はクロードがなぜ知らないことにしてくれと言うのか聞かずにしっかり頷く。

侍医とは反対に落ち着きを取り戻せないのはアベルだ。顔は青ざめ、出てくる汗を拭き拭き狼狽している。


「侍従、行くぞ」

 
そんなアベルを横目にクロードは扉へ向かう。
 
ハッとしたアベルは腰を低くしながらクロードより先に扉へ小走りで向かう。


クロードが私室へ戻る中、後ろから付きそうアベルはどうしたものかと、困窮していた。


(普通ならば国王を騙した重罪で牢屋に入るはず。それが侍従見習いを心配し、侍医まで呼ばせ、知らなかったことにしろと仰せられる)

居間へ戻ったクロードはソファに腰を下ろすと長い足を組む。



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