今夜、シンデレラを奪いに
「…………そ、れはそう、だけど。今はもう胸が苦しくて。

真嶋は容姿こと言われるの嫌かもしれないけど、やっぱり特別だよ」


「透子に言われる分には嬉しいです。あなたの気に召すならこの顔も悪くない。

…………けれどそう言うわりには俺の方を見てくれませんね。」


「こちらを向いて」と顔の向きを変えられると、微かに微笑んだ真嶋と鼻が触れ合いそうな距離にいる。耐えられなくてすぐに顔を伏せた。


「だから、怖いくらいに綺麗なんだってば」


「怖がられるのは心外です。そう避けられると俺が透子を見れません」


「見なくていいって。私は真嶋とは違うの。

人並み外れて整った顔立ちの人にじっと見られる一般人の気持ちを察してよ。」


「…………透子はまだわかってなかったんですね。」


何を、と疑問に思っていたら額に柔らかな唇が触れる。


「俺にはあなたが眩しくてしょうがない。

少し困ったように目を伏せているのも、上気した頬も、小さな唇が艶っぽく形を変えるのも。」


言葉が示す場所に合わせて唇が触れて、瞼と、頬と、唇に淡い熱がかすめる。照れくさくて恥ずかしくてぎゅっと目を瞑った。


「あなたがこちらを見つめ返す一瞬の間は、正気を奪われそうな心地がしているんですよ。」


「そんなわけない」と目を上げると真嶋と視線が絡んだ。髪を撫でられ、両手で頬を挟まれる。


「綺麗だ」


私はそういう扱いには慣れてないから。気が変になりそうだからやめて………


「ふふっ、瞬きされると指がくすぐったいです。その睫毛は本当にどうなってるんですか?」





「……………………へ?」

真嶋か睫毛を指先で挟んで「パサパサする」と呟いている。忘れていたけど、お店用のメイクでポリュームたっぷりのつけまつげをしていたんだっけ。


「そういえば毛虫が乗ったような目って言ってた」


「はい、透子の瞳を隠す余計な飾りだと思いますよ。」


「このドレスも」


「ええ。下品と悪趣味でできたような服ですからあなたには似合いません。早く脱がせてしまいたい。」


「…………ほおー」
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