今夜、シンデレラを奪いに

3 恋の終わりと道端の天使

「もう、気持ちにケリはついているんですか?」


「…………っ!!」



急に小声で聞かれてびくっと固まる。まるで、私が失恋を引きずってるのを知ってるみたいな言い方だけど……



「な、なんのこと?」


「今さら、戯れ言を」



呆れたような真嶋の様子に、ますます訳がわからなくなる。



「仮に俺の知人を紹介するとして、矢野さんが実はどこかの誰かに心をとらわれていたというのでは困りますから。

……例えば昔の男とか、片想いの相手とか。


条件とは、ただそれだけのことです。もし心当たりがあれば早急に清算を。」


「………」


真嶋の言うことが正論なので何も言い返せない。それどころか、思い出したように失恋の傷がじくじくと痛み始めた。


冗談でも後輩を脅すようなことをした罰だろうか。それとも男の人を紹介してほしい訳でもないのに、余計なお願いをした罰?


ズキズキと胸が痛い。

だけど痛みは無視して目の前の仕事に集中した。少しでも早く成果をあげたい。もう私一人の問題じゃないのだ。

だって私が不甲斐ないせいで、まだ真嶋に仕事の第一線を経験させてあげられていない。上司が私じゃなければ彼はもっと仕事を楽しめるはずなのに。



「……今は自己嫌悪してる場合じゃないっ!早く報告書まとめよ!」


真嶋にも業務の指示をしようと声をかけると、珍しく顔色が悪そうだ。


「真嶋、体調悪い?大丈夫?」
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