今夜、シンデレラを奪いに
「矢野が大変な時にいなくなってごめんな」
「でも異動ですから、仕方ないってわかってます。」
「それがさ、俺、部長と揉めたんだよ。
すげーぶちギレられて、その後にすぐ異動の内示が出たの。笑うだろ?」
「えぇ!?
一体、何の件でそんなに揉めたんですか?」
「まあ、ちょっとした意見を言ったんだけどさ。とにかく急に人が減ったのは俺の不注意が原因だから。
矢野に迷惑かけて悪かった。部下も出来て大事な時に一人にしてごめんな。
俺も矢野が成長するの見てて楽しかったから、異動になった時は残念だったんだ。」
優しい言葉に何度だって心を奪われてしまう。鴻上さんは外見も格好いい人だけど、モテるのは掛け値なしの優しさのせいだと思う。
『誰かに心をとらわれていた、というのでは困りますから。
昔の男とか、片想いの相手とか。
心あたりがあれば、早急に清算を』
奥歯を噛んで涙を我慢したら、何故か真嶋の言葉を思い出した。
ムカつく奴だけど、あの時言われた言葉は正しい。鴻上さんのことを自分の中でちゃんと終わらせないと、きっと私は前に進めない。
「あの、忘れて貰っていいんですけど……
ずっと……好きでした」
少し困った顔の視線を向けられる。多分、これまでに沢山の女の子に同じように向けてきたはずの『ごめんなさい』の顔。
「大丈夫です。私にはそういう気持ちは無いって分かってたんで。」
鴻上さんは言葉を探してるようだったけど、少しも驚いたりしていない。
「すみません、その様子だと気付いてましたよね。
困らせてごめんなさい。でもフッて貰えると助かります。」
「卑屈過ぎ」
頭をぱしっと軽く叩かれて、びっくりして顔を上げる。
「困ってるわけじゃないんだ。もちろんすごく嬉しいよ。
少し前にここで偶然会ったの覚えてる?あの時、俺は失恋直後の腑抜けで」
あの日のことを忘れるわけがない。小さく頷いて言葉の続きを待つ。
「矢野に会って、マズイなーと思ったんだ。
矢野は可愛いし、俺に優しいし、うっかり甘えそうでヤバいって。
……だからあの時は無理して先輩面してたんだ。今だから言うけど、我慢するのはすげーしんどかったよ」
「でも異動ですから、仕方ないってわかってます。」
「それがさ、俺、部長と揉めたんだよ。
すげーぶちギレられて、その後にすぐ異動の内示が出たの。笑うだろ?」
「えぇ!?
一体、何の件でそんなに揉めたんですか?」
「まあ、ちょっとした意見を言ったんだけどさ。とにかく急に人が減ったのは俺の不注意が原因だから。
矢野に迷惑かけて悪かった。部下も出来て大事な時に一人にしてごめんな。
俺も矢野が成長するの見てて楽しかったから、異動になった時は残念だったんだ。」
優しい言葉に何度だって心を奪われてしまう。鴻上さんは外見も格好いい人だけど、モテるのは掛け値なしの優しさのせいだと思う。
『誰かに心をとらわれていた、というのでは困りますから。
昔の男とか、片想いの相手とか。
心あたりがあれば、早急に清算を』
奥歯を噛んで涙を我慢したら、何故か真嶋の言葉を思い出した。
ムカつく奴だけど、あの時言われた言葉は正しい。鴻上さんのことを自分の中でちゃんと終わらせないと、きっと私は前に進めない。
「あの、忘れて貰っていいんですけど……
ずっと……好きでした」
少し困った顔の視線を向けられる。多分、これまでに沢山の女の子に同じように向けてきたはずの『ごめんなさい』の顔。
「大丈夫です。私にはそういう気持ちは無いって分かってたんで。」
鴻上さんは言葉を探してるようだったけど、少しも驚いたりしていない。
「すみません、その様子だと気付いてましたよね。
困らせてごめんなさい。でもフッて貰えると助かります。」
「卑屈過ぎ」
頭をぱしっと軽く叩かれて、びっくりして顔を上げる。
「困ってるわけじゃないんだ。もちろんすごく嬉しいよ。
少し前にここで偶然会ったの覚えてる?あの時、俺は失恋直後の腑抜けで」
あの日のことを忘れるわけがない。小さく頷いて言葉の続きを待つ。
「矢野に会って、マズイなーと思ったんだ。
矢野は可愛いし、俺に優しいし、うっかり甘えそうでヤバいって。
……だからあの時は無理して先輩面してたんだ。今だから言うけど、我慢するのはすげーしんどかったよ」