今夜、シンデレラを奪いに
頬に熱い体温を感じて、びっくりして身を竦める。状況に頭がついていかない。


「俺の場合、歩いているだけでじろじろと見られますので」


「急に何の自慢よ?

っていうか、手を離してっ」


熱い。顔が熱いし、押し当てられた真嶋の胸板も熱い。自分の容貌が凶器だと知ってるなら、誤解を招くようなことは止めて欲しい。


「好奇の目で見られるのは慣れているという話です。ですから、俺にそういった気遣いは無用です。

……泣きたいなら好きなだけ泣いて良いですよ。」



いつも小憎らしいことしか言わないくせに。



どうして今だけ優しい声を出すの馬鹿!



「私が気にするっ!

気になって泣くどころじゃなくなったから!!」



「そうですか?」と顔を覗き込まれたので、泣き腫らした目で睨んだ。



「凛々しいですね。

でも、まだ人目に晒さないほうが賢明ですよ。

俺は嫌いじゃないですけど




……柔道か何かの大会で、惜しくも優勝を逃した選手の男泣きを思わせるようで」


………………!



真嶋にとって私がどういう存在かよおぉぉく分かった。


「男泣きで悪いか!」


肩の辺りをグーで突こうとすると、「今のは褒め言葉です」と手のひらで拳を包まれる。


あれ?


「……真嶋、手が熱い」


「じっとしてて」と額に手を伸ばすと、もっと熱かった。


「…………っ
急に何ですか?」


「熱あるじゃない!こんなとこにいたら駄目でしょ!!」



どうして今まで気づかなかったんだろう。暗がりでもわかるほど顔も赤い。


「やっぱりずっと体調悪かったんだ!もうっ、無理してないで仕事なんか休めばよかったのに」
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