今夜、シンデレラを奪いに
デザートを食べる前にはオープンテラスに移動する。ゆったりとしたソファ席で東京湾を眺めると、夜景とキャンドルの光が幻想的で美しい。
「どうぞ」
いつの間に用意したのか、不意に真嶋に花束を手渡される。フリルのような花がたっぷりとしたリボンで束ねられた可愛らしいブーケだ。
「花束なんて、いくらなんでもキザ過ぎるでしょ!駄目だ笑う……あははっ」
「そういう反応をすると思ったので準備しておきました。紹介相手の男が同じことをしても笑う気ですか?
やり直し。」
またしても講師然とした真嶋の指摘に笑いをひっこめる。
「…………綺麗だね。ありがとう、これ何て言う花?」
「メジャーな花だと思ったんですが矢野さんは花の名前には疎いようですね。」
「悪かったわね、花の名前に疎くて!」
結局、真嶋と私なのでムードたっぷりの場所でも憎まれ口の応酬になる。だけどそれすら不思議と心地よくて楽しい。
「なんだか、まるっきり非日常だなぁ。
きっとこういう体験をすることはもう無いから、今日のことは忘れないと思うよ。ありがとう」
「では生涯忘れないでください」
「え?」
急に変な言い方をするからびっくりして聞き返す。表情に影が指したように見えたけど、光の加減かもしれない。
「少なくとも明日は、今日覚えたことを忘れないように。上手く猫を被れるように祈ってます。」
うん、やっぱり気のせいだ。いつも通りのムカつく真嶋の様子に安心して胸を撫で下ろした。
「どうぞ」
いつの間に用意したのか、不意に真嶋に花束を手渡される。フリルのような花がたっぷりとしたリボンで束ねられた可愛らしいブーケだ。
「花束なんて、いくらなんでもキザ過ぎるでしょ!駄目だ笑う……あははっ」
「そういう反応をすると思ったので準備しておきました。紹介相手の男が同じことをしても笑う気ですか?
やり直し。」
またしても講師然とした真嶋の指摘に笑いをひっこめる。
「…………綺麗だね。ありがとう、これ何て言う花?」
「メジャーな花だと思ったんですが矢野さんは花の名前には疎いようですね。」
「悪かったわね、花の名前に疎くて!」
結局、真嶋と私なのでムードたっぷりの場所でも憎まれ口の応酬になる。だけどそれすら不思議と心地よくて楽しい。
「なんだか、まるっきり非日常だなぁ。
きっとこういう体験をすることはもう無いから、今日のことは忘れないと思うよ。ありがとう」
「では生涯忘れないでください」
「え?」
急に変な言い方をするからびっくりして聞き返す。表情に影が指したように見えたけど、光の加減かもしれない。
「少なくとも明日は、今日覚えたことを忘れないように。上手く猫を被れるように祈ってます。」
うん、やっぱり気のせいだ。いつも通りのムカつく真嶋の様子に安心して胸を撫で下ろした。