今夜、シンデレラを奪いに

5 間違いだらけのお見合い

その翌日の土曜日。


真嶋に指定された場所が都内の歴史あるホテルだったので嫌な予感はしていた。だけど、なぜ私は振り袖を着て「かぽーん」と鹿威しの響く日本庭園にいるのだろうか。

これは紹介とかいうレベルじゃない。もはやお見合いだ。



遡ること二時間前、待ち合わせ場所に到着すると真嶋がいつも通りの皮肉めいた笑いを浮かべていた。


「矢野さんには何かと驚かされますが、連日同じ服を着ても気にしない方だとは思いませんでした。」


「ち、違うから!普段ならそういうことはしないってば。

でもこれはわざわざ真嶋が今日のために準備してくれた服だから……」


「そういう意図ではありませんよ」



昨日は帰宅した後でミルクティー色のセットアップを脱いで風を遠し、ホコリを払うためにそっと拭いた。繊細なシルクの手触りが気持ちよく、胸元のカッティングやスカートのスリットが女らしい。


「ご心配しなくても、今日の衣装は別に準備しています。」


と、用意されていたのが振り袖だったのだ。


「帯が苦しい……」


「そうしているとまるで成人式のようですね。それとも七五三でしょうか」


「誰のせいよ!

で、なんで真嶋がお見合いの席に付いてくるわけ!?」


「矢野さんのような無骨で粗忽な女が、戦略もなしに男を落とせるとでも」


上から目線で笑う真嶋を恨めしく見上げる。


ブコツで、ソコツ。


真嶋にはちょいちょい男性向けとしか思えないような言葉でけなされている気がするんだけど、気のせいかな。


これまで真嶋に言われた暴言を思い出していたら、どアップの顔が目の前に現れて息が止まりそうになる。


「ほら、化粧崩れてますよ」


「近い近いっ……化粧なんか自分で直すってば」
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