今夜、シンデレラを奪いに
「緊張してる?」


「いえ最初は緊張してたんですけど、アイツ……真嶋のお陰で緊張も吹き飛びました。

本当はもう少し上品にしていたかったんですが」


素直に打ち明けると立花さんは大きな口で笑う。弁護士さんなんて近付き難いと身構えていたけど、朗らかな人柄で安心した。


木陰になっているベンチに並んで座り、綺麗な和風庭園を眺める。


「女性にあんな軽口を叩いているナツは初めて見たよ。彼もリラックスしてるようだし、信頼されてるんだね。」


「あれは軽口というか、嫌味というか。あの態度はリラックスしてるんですかねー?」


「うん、すごくね。オフィシャルな時と全然違う

……って、さっきから俺たちナツの話ばかりだね」


「そうですね。これなら三人でいた方が良かったのかも」


その時、一羽の鳩が立花さんの頭上にある松の枝に止まった。


「あっ!」


「失礼します」と立花さんを突き飛ばした瞬間に、頭の上にベチャっという感触が乗っかる。ラッキーなことに頭上でキャッチしたので着物は汚れていないみたいだ。


「お召し物汚れて無いですよね?大丈夫でした?」


「え…………

透子さん、わざと鳩のフン被ったの?俺を庇って?」


驚いたまま固まっている表情を見ている間に、だんだん恥ずかしくなってくる。


「すみません……ガサツで」


「ありがとう、ガサツだなんてとんでもない。

…………ていうか、そんな綺麗な格好してるんだから普通なら人の服が汚れるとか二の次だと思うよ。」


そう言いながら立花さんは綺麗なハンカチで頭のベタベタを丁寧に拭き取ってくれる。


「すみません、ハンカチが鳩のフンに」


「そんなのいいから。それよりごめん、せっかく綺麗なのにこんな目に合わせて。

透子さんさえよければ、これからナツ以外の二人の話題を少しずつ増やしていこう。

次会うときにはもっとカジュアルな場所で」
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