今夜、シンデレラを奪いに
「どうしたの?」
「いえ、何も。」
作り笑いで立花さんの疑問をかわす。女らしくマトモな立ち振舞いができないと思われて監視されているんです、なんて言える訳がない。
「今日の服すごく似合っていて良いね。綺麗だ」
甘い言葉が嬉しいけど、照れて言葉が返せなくなる。
真嶋がドレスコードがあるなんて言うから、さっきは急いでワンピースを買って着替えた。普段は着ないような女性らしい膝上丈のノースリーブだけど、これを選んで良かった。
だけど携帯に表示されたメッセージに、私のささやかな自己満足はガタガタと音を立てて崩壊する。
『さっきからスカート上がりすぎです。
痴女なんですか?それとも有り余る腹の肉のせいですか?』
「ありえないっ。
いくらなんでも酷いセクハラっ!!」
「セクハラ!?ごめん脚を見てたのは謝るから」
「すみません、違うんですーーー!!」
真嶋のせいで立花さんに酷い誤解をされてしまった。立花さんとの時間に限って言えば、挙動不審になっているのは絶対に真嶋のせいだ。
っていうか、スカートが上がるほど腹の肉が有り余ってると思うなよ!タイトなワンピースは、誰が着たって深く座ると普通にスカート丈が上がるんだから。ましてや痴女だなんて酷過ぎる言い様だ。
スカートの裾を引っ張って座り直し、心の中だけで「真嶋ぁああ!このヤロウッ!!」と叫び倒した。
念のため下腹部辺りを触って確かめる。…………プニプニしてるかもしれないけど、目立つほどは出てないもん。
「あははっ、良かった。怒られたかと思った」
朗らかに笑った立花さんにもう一度「すみません」と謝って携帯をしまった。
こんなものを出しているから悪いのだ。たとえ真嶋がどこかから監視していて、どうしようもない罵倒を送りつけてくるとしても、無視してしまえばいいだけだ。
「肩、冷えてる」
突然背中に回された手に、体が硬直する。
「もっと暖めても良い?」
紳士でスマートな人に、すごくスマートに口説かれてる。こんなことは自分の身には勿体ない奇跡だ。だけど急な変化に戸惑って、気持ちがついていかない。
だからといって「そういうのはまだ、ちょっと」とか言ったら、絶対立花さんを傷付けてしまう。
立花さんも、まさか私みたいなどこにでもいる女に拒絶されるとは思っていないだろう。
「照れると黙る癖、可愛いね。
透子さんは、自分が思ってるよりずっと女性らしい人だ」
え? と振り返ったら、優雅な立花さんの顔がずっと近くにあった。笑うと糸のように細くなる目。それがもっと近付いて、気がつけば唇が触れあっていた。
「いえ、何も。」
作り笑いで立花さんの疑問をかわす。女らしくマトモな立ち振舞いができないと思われて監視されているんです、なんて言える訳がない。
「今日の服すごく似合っていて良いね。綺麗だ」
甘い言葉が嬉しいけど、照れて言葉が返せなくなる。
真嶋がドレスコードがあるなんて言うから、さっきは急いでワンピースを買って着替えた。普段は着ないような女性らしい膝上丈のノースリーブだけど、これを選んで良かった。
だけど携帯に表示されたメッセージに、私のささやかな自己満足はガタガタと音を立てて崩壊する。
『さっきからスカート上がりすぎです。
痴女なんですか?それとも有り余る腹の肉のせいですか?』
「ありえないっ。
いくらなんでも酷いセクハラっ!!」
「セクハラ!?ごめん脚を見てたのは謝るから」
「すみません、違うんですーーー!!」
真嶋のせいで立花さんに酷い誤解をされてしまった。立花さんとの時間に限って言えば、挙動不審になっているのは絶対に真嶋のせいだ。
っていうか、スカートが上がるほど腹の肉が有り余ってると思うなよ!タイトなワンピースは、誰が着たって深く座ると普通にスカート丈が上がるんだから。ましてや痴女だなんて酷過ぎる言い様だ。
スカートの裾を引っ張って座り直し、心の中だけで「真嶋ぁああ!このヤロウッ!!」と叫び倒した。
念のため下腹部辺りを触って確かめる。…………プニプニしてるかもしれないけど、目立つほどは出てないもん。
「あははっ、良かった。怒られたかと思った」
朗らかに笑った立花さんにもう一度「すみません」と謝って携帯をしまった。
こんなものを出しているから悪いのだ。たとえ真嶋がどこかから監視していて、どうしようもない罵倒を送りつけてくるとしても、無視してしまえばいいだけだ。
「肩、冷えてる」
突然背中に回された手に、体が硬直する。
「もっと暖めても良い?」
紳士でスマートな人に、すごくスマートに口説かれてる。こんなことは自分の身には勿体ない奇跡だ。だけど急な変化に戸惑って、気持ちがついていかない。
だからといって「そういうのはまだ、ちょっと」とか言ったら、絶対立花さんを傷付けてしまう。
立花さんも、まさか私みたいなどこにでもいる女に拒絶されるとは思っていないだろう。
「照れると黙る癖、可愛いね。
透子さんは、自分が思ってるよりずっと女性らしい人だ」
え? と振り返ったら、優雅な立花さんの顔がずっと近くにあった。笑うと糸のように細くなる目。それがもっと近付いて、気がつけば唇が触れあっていた。