今夜、シンデレラを奪いに
「やっぱり全然納得できません!!」


高柳さんとの個別面談でもう一度真嶋について質問したところ、「プライバシー」の一言で片付けられてしまった。


「真嶋が懲戒解雇なんて絶対間違ってます。調査し直してください。」


「懲戒解雇などというアナウンスはしていない。」


「理由なく社員名簿から消えた人はみんなそうだって聞きましたよ?」


「勝手な憶測だ。こちらに説明する義務はない。」


「それじゃさっぱりわからないじゃないですか。私は真嶋の上司なんです。彼のことはよく知っています。

あんなにプライドの高い奴が不正なんかするわけないんですよ!!」


大きな声で叫ぶと、高柳さんは却って声を押さえて諭すように続ける。


「矢野さん。ここは会社で、今は業務に関する面談中だ。感情を訴える場ではないことくらい分かるだろう?

部下を持つような立場ならわきまえろ。」


返ってきたのは容赦ないシャットアウトだった。この前執務室にいたときには、もっと話が通じる人だと思っていたのに。




「わからずやっ!鬼畜!冷血漢!!

あんぽんたんの皇帝め…………!!」


「うわぁ!矢野、顔怖過ぎる!」


執務室を出た後、余程酷い顔をしていたのか廊下ですれ違った鴻上さんに驚かれてしまった。その後「社内通達見たよ」と心配そうに言われた。


「不正の件で怒ってんの?」


「それは確かにショックなんですけど、真嶋が処分されたのが信じられなくて…………。さっき高柳さんに直談判してきたんですけど、ダメでした。」


「高柳さんに直談判って、随分命知らずなことするなぁ。」


「絶対に不当な処分なんですよ。誤解に決まってます!」


「うーん、でもなぁ。高柳さんがミスとか誤解とかするのは、考えられなれないんだよなぁ。

ああ見えて理不尽な事では怒らないし、雰囲気怖いけど言ってることをよく聞いてみるとアドバイスだったりするんだよ。」



アドバイス?さっきの内容のどこが!?

と、高柳さんの言葉を思い出す。


『感情を訴える場ではないことくらいわかるだろう?』



…………?



感情論じゃなければいい、のかな?


仕事のやり方と同じようにしたら、話を聞いてもらえる?
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