今夜、シンデレラを奪いに
「中途半端な調査の情報を流して一度相手を油断させて、いっきに仕留めるためですよね?

会社が偉い人だけ庇ってるわけじゃないって……信じたいです」


プライドの塊のような真嶋が調査をしているなら、絶対妥協するはずない。

緊張しながら高柳さんの反応を待つ。高柳さんはしばらく真顔を保っていたけど、ふと表情を緩めた。いつもより少しだけ凶暴な気配のする笑顔だった。



「当たり前だろ?うちの会社の経営層を見くびるなよ。

あー……もう、社員にそれほど信用ない組織なのかと思って心配したじゃないか」


「いや、その……」


「君はこのレポートに書かれている内容を吹聴すると脅していた訳だが、はたして本当に実行できるだろうか?

この事実を知った上で、君は人の思いを踏みにじることができる人格には見えないんだが」



「…………え?」



さっきは高柳さんは、質問に正解すれば要求を聞くと言ってなかった?

私の人格を認めるような言い方をしているけど、要は「お前の脅しは意味無い」って言われてない…………?


「ズルい!それとこれとは別です!私は高柳さんを恐喝しに来たんですよ!!」


「君には悪事の才能を感じないから、悪いけど脅されても怖くない。」


「話が違うじゃないですかぁ!!」


高柳さんを睨み付けて怒鳴る。すると、妙に平坦な表情でしばらく固まっていた高柳さんが、我慢の限界のように吹き出した。無表情はただのポーズだったらしい。


「ははっ。全く………君の行動力は常軌を逸してるな。ここまでして一体何が望みなんだ?」



私だって、まさか自分が鬼の皇帝と呼ばれる高柳さんを脅すことになるとは思わなかった。できれば会社では平穏無事に過ごしたい。それなのに、この胸に灯った熱はどこまでも私を駆り立てる。



「真嶋がたった一人で辛い仕事をさせられてる現状を変えてください。

私が真嶋の仕事を補佐します。だから、彼と同じ部署に私を配属してほしいんです。」
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