今夜、シンデレラを奪いに
3章
9 シンデレラの闇夜
その日、地下鉄の銀座駅を降りると逸る気持ちを抑えながら地図を片手に目的の場所を探した。
最後の詰めと聞いていたので、オフィシャルな場所を想像していたけど、行き着いた場所は想像とはかけ離れた夜の香りの漂う薄暗い室内だ。
表には看板も何も出ていない。ここは会員制の高級クラブ………?
予定された時間にはかなり早いけれど、下見をするため大理石の床を奥へと進む。鏡になっている壁に自分の姿が映り込んで、真嶋から貰ったアメジストのピアスが室内の照明を反射してキラッと光った。
「あら新人さん?」
「いえ、私は……」
ウロウロしていたら和服の美人さんに声をかけられる。年齢不詳で、艶っぽい微笑みを浮かべている。
「そう、じゃあ体験入店なのね。
あなたラッキーよ。ウチは基本的にお断りしてるんだけど、今日は人手が足りないから特別ね。
さ、急いでヘアメイクしましょ」
「え…………?」
断るタイミングを失っている間に、広いメイクルームに通される。周りはゴージャス美人なお姉さんだらけ。もしかしてこの雰囲気はホステスさん達だろうか。
「私は別の用件で来たもので、」
「自信が無いのね、でも大丈夫よ。ウチは重役のお客様ばかりだし、ある程度年齢いってる方が逆にウケが良いから」
「いや、あのまだ28ですし若いんで…………」
「そうねその意気よ!」
慈愛を込めた笑顔を返される。会社ではまだまだ若手扱いだけど、こういう世界では28歳は年増の部類に入るんだなぁ…………と、つい現実逃避ぎみの感慨に流される。
その時にひときわ艶やかな女の子がやってきて、「オハヨーございまーす、その娘新人?」と鈴を転がすような声が聞こえた。
「あんまり色気ないからウィッグ被った方が良くない?カラコンと、つけまも盛り盛りにしようよ!」
「ユリナちゃんが言うならきっとそうねぇ。」
有無を言わさず巻き髪ロングヘアーのウィッグと、目が大きく見えるコンタクトをつけられる。彼女はこのお店のナンバーワンの女の子だそうだ。
「胸の谷間からライター出すと、オジサン達喜んでくれるよー」
「ええと………物を挟めるほど胸が無いです」
「だいじょぶ、ユリナだって胸に3個ずつパッド入れてるから!」
人懐っこい笑みでアドバイスをくれた。彼女がナンバーワンというのはとても頷ける。初対面なのにかなり個人的なことをあっけらかんと言ってくれるなんて、いい人に違いない。
最後の詰めと聞いていたので、オフィシャルな場所を想像していたけど、行き着いた場所は想像とはかけ離れた夜の香りの漂う薄暗い室内だ。
表には看板も何も出ていない。ここは会員制の高級クラブ………?
予定された時間にはかなり早いけれど、下見をするため大理石の床を奥へと進む。鏡になっている壁に自分の姿が映り込んで、真嶋から貰ったアメジストのピアスが室内の照明を反射してキラッと光った。
「あら新人さん?」
「いえ、私は……」
ウロウロしていたら和服の美人さんに声をかけられる。年齢不詳で、艶っぽい微笑みを浮かべている。
「そう、じゃあ体験入店なのね。
あなたラッキーよ。ウチは基本的にお断りしてるんだけど、今日は人手が足りないから特別ね。
さ、急いでヘアメイクしましょ」
「え…………?」
断るタイミングを失っている間に、広いメイクルームに通される。周りはゴージャス美人なお姉さんだらけ。もしかしてこの雰囲気はホステスさん達だろうか。
「私は別の用件で来たもので、」
「自信が無いのね、でも大丈夫よ。ウチは重役のお客様ばかりだし、ある程度年齢いってる方が逆にウケが良いから」
「いや、あのまだ28ですし若いんで…………」
「そうねその意気よ!」
慈愛を込めた笑顔を返される。会社ではまだまだ若手扱いだけど、こういう世界では28歳は年増の部類に入るんだなぁ…………と、つい現実逃避ぎみの感慨に流される。
その時にひときわ艶やかな女の子がやってきて、「オハヨーございまーす、その娘新人?」と鈴を転がすような声が聞こえた。
「あんまり色気ないからウィッグ被った方が良くない?カラコンと、つけまも盛り盛りにしようよ!」
「ユリナちゃんが言うならきっとそうねぇ。」
有無を言わさず巻き髪ロングヘアーのウィッグと、目が大きく見えるコンタクトをつけられる。彼女はこのお店のナンバーワンの女の子だそうだ。
「胸の谷間からライター出すと、オジサン達喜んでくれるよー」
「ええと………物を挟めるほど胸が無いです」
「だいじょぶ、ユリナだって胸に3個ずつパッド入れてるから!」
人懐っこい笑みでアドバイスをくれた。彼女がナンバーワンというのはとても頷ける。初対面なのにかなり個人的なことをあっけらかんと言ってくれるなんて、いい人に違いない。