今夜、シンデレラを奪いに
部長のあまりにも卑劣で気持ちの悪い発想に、お酒を作る手が震えた。アイスピックを強く強く握りしめる。これを振りかぶったらどうなるだろうか。その汚い言葉を吐き出す喉に向けたら。
…………駄目、もっと冷静にならなきゃ。
さっきから当然のように肩や腰に手を回すようになった部長の感触がさらに不快に感じられるようになった。油っぼいニオイやタバコの煙も、全部が神経を逆撫でする。
予定では真嶋が来る前には席を離れているつもりだったけど、今ここを離れるわけにはいかない。
でも…………どうしよう?この姿で部長は騙せても、真嶋にはきっと私だと見破られる。私がいると分かったら真嶋の仕事の邪魔になってしまうだろう。
ユリナちゃんに小声でお願いをした。
「若い男の人って苦手なの。もう一人来たら、悪いけどユリナちゃんがそばについてくれる?できれば顔も見たくなくて、こっち側ガードしてくれたら嬉しいんだけど」
「えー!?マジ?いいけど変わってるね!若いお客さん激レアなのに勿体ない。じゃあ、まりあはオジサン達上手く転がしておいてよ。」
これで上手くいくのか、自信がないけどしょうがない。仮の立場を脱ぎ去った真嶋の現実は、思ったよりもハードで、そして醜悪な感情が渦巻く中にいるらしい。
どうせなら私が頭が良くて、腕力もあるキラキラした王子様だったら良かったのに、実際にはギャバ嬢くずれの変装をした冴えないアラサー営業社員。それでも今は、私しか真嶋を守れる人はいないんだ。
その時静かな靴音がして、場の空気が変わった。
ユリナちゃんが口を開けて固まり、マドラーを落とす。部長ともう一人の男性は体にぴりっとした緊張感を漂わせた。
鏡越しに確認するとやっぱり真嶋だ。前髪を上げて、普段のスーツとは違う…………何が違うのかは分からないけど全体的なスタイルとオーラが全然違う漆黒のスーツに身を包んだ真嶋は、人を超越してるとしか思えない冴えざえとした美しさを放っている。
真嶋は傲岸不遜を絵に書いたような顔でオジサン二人を見下した。
「こういった店に経費で来るのは感心しない」
…………駄目、もっと冷静にならなきゃ。
さっきから当然のように肩や腰に手を回すようになった部長の感触がさらに不快に感じられるようになった。油っぼいニオイやタバコの煙も、全部が神経を逆撫でする。
予定では真嶋が来る前には席を離れているつもりだったけど、今ここを離れるわけにはいかない。
でも…………どうしよう?この姿で部長は騙せても、真嶋にはきっと私だと見破られる。私がいると分かったら真嶋の仕事の邪魔になってしまうだろう。
ユリナちゃんに小声でお願いをした。
「若い男の人って苦手なの。もう一人来たら、悪いけどユリナちゃんがそばについてくれる?できれば顔も見たくなくて、こっち側ガードしてくれたら嬉しいんだけど」
「えー!?マジ?いいけど変わってるね!若いお客さん激レアなのに勿体ない。じゃあ、まりあはオジサン達上手く転がしておいてよ。」
これで上手くいくのか、自信がないけどしょうがない。仮の立場を脱ぎ去った真嶋の現実は、思ったよりもハードで、そして醜悪な感情が渦巻く中にいるらしい。
どうせなら私が頭が良くて、腕力もあるキラキラした王子様だったら良かったのに、実際にはギャバ嬢くずれの変装をした冴えないアラサー営業社員。それでも今は、私しか真嶋を守れる人はいないんだ。
その時静かな靴音がして、場の空気が変わった。
ユリナちゃんが口を開けて固まり、マドラーを落とす。部長ともう一人の男性は体にぴりっとした緊張感を漂わせた。
鏡越しに確認するとやっぱり真嶋だ。前髪を上げて、普段のスーツとは違う…………何が違うのかは分からないけど全体的なスタイルとオーラが全然違う漆黒のスーツに身を包んだ真嶋は、人を超越してるとしか思えない冴えざえとした美しさを放っている。
真嶋は傲岸不遜を絵に書いたような顔でオジサン二人を見下した。
「こういった店に経費で来るのは感心しない」