morning moonー朝の月ー
morning moon
 帰りそびれた朝の月

 太陽とひとときの逢瀬

 でも、帰らなければならない

 本来いる場所へ



「ごめん。急な出張でさ、これから向かわなければ、ならなくなって・・・」

 待ち合わせにしていた駅に向かう途中にかかってきた彼からの電話。

「仕事なら、しょうがないよね」

 別の会社でなかなか都合が合わない中、やっと取り付けたデートの約束だったのだけれど。

「本当にごめん」

 電話の向こうで頭を下げている様子が目に浮かぶ。

「もう、いいってば。気を付けて行ってきてね」

「ありがとう。帰ったら、連絡する。それじゃあ」

「じゃあ」

 通話ボタンを切にした。

 明日は土曜日だから、今晩はゆっくり食事ができると思ったのに。

 余った時間をどうしようか。

 ボーッと考えながら歩いていたら、何かにぶつかった。

「イタッ!」

 ぶつかった反動で少し後ろに飛ばされてしまい、尻餅をついてしまった。

「大丈夫ですか?」
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