morning moonー朝の月ー
「どうしました?」

「いえ。えーと、私は成瀬美香です」

「成瀬、美香?ま、まさか・・・」

 私と同じような反応をしたことに、言葉が返せない。

 こんな偶然があるなんて。

「やっぱり・・・そうなんだね」

「やっぱりそうなのね」



 私たちは高校時代付き合っていた。

 卒業して、それぞれの道に進んで、だんだん距離が空いて。

 彼が会社の転勤で遠くに行くことになったことを、きっかけに別れたのだった。


「久しぶりだね」

 あれからもう5年経っている。

 あの時の思いは忘れるはずもない。

 あの恋はまだ心の中にある。

 今は別の人とつきあっているけれど。

「こんな偶然、あるのね」

「そうだな」



 近況をいろいろと話しながら、食事をした。

 でも、触れなかった話題がある。

 お互いの恋愛のことについては、二人とも話を避けていた。
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