優しい音を奏でて…

私が洗面所にこもって化粧を始めると、ピアノの音が漏れてくる。

昔、ゆうくんが弾いてたバイオリンの曲。

右手だけで弾いてる…。

昔は、ゆうくんがお母さんとバイオリン持って遊びに来てくれて、よく一緒に合わせて遊んだなぁ。

あの頃が1番幸せだったかも。

恭子の事もなくて、全然ドロドロしてなくて、純粋で、ただ仲良しで。



そういえば、恭子とはどうなったんだろ?

金曜の夜や土曜の昼に私を誘いに来るって事は、もう付き合ってないのかな?

他にデートする恋人もいないのかな?



10分後、簡単に化粧を済ませて洗面所を出ると、ピアノにもう飽きたのか、防音室を出たゆうくんがこっちを向いて微笑んでいた。

「うん。奏は化粧すると美人になるね。」

っ!?

私、今、絶対、顔赤いよね!?

ほんとに今日のゆうくんはどうしちゃったの?


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