優しい音を奏でて…


「奏、酒飲む?」

ゆうくんに聞かれて、

「んー、いらないかな?
ゆうくん、飲みたいなら、飲んでいいよ。」

と答えると、

「俺も今日はいいかな?
車だし、今飲んだら、うっかり奏を
襲っちゃいそうだし?」

と笑った。

はぁっ!!
何、それ!?

この展開、付いていけないんですけど!?



「それより、奏、いつからおふくろと連絡
取り合ってんの?」

「こっち戻ってきてすぐの頃かな?
私が引きこもってたら、お母さんのとこに
遊びに来た葵ちゃんがいろいろ相談に乗って
くれて…。
今の会社も葵ちゃんが紹介してくれたんだよ。」

「奏、引きこもってたの?
何で?」

「いや、大した事じゃないよ。
いろいろあって、あんまり外に出たくなくて、
家でぐだぐだしてただけだから。」


すると、ゆうくんは突然思い当たったような顔をした。

「っ!!
もしかして、マンションもおふくろの紹介?」

「うん。オーナーさんに直接交渉してくれて、
家賃も少し安くしてもらえたんだよ。
葵ちゃんには、感謝してもしきれないよ。」

頭を抱えたゆうくんは、ボソボソと呟いた。

「はぁぁぁぁ…。
俺は孫悟空か?
いつまであの人の手の中で踊らされれば気が
済むんだ?」

「えっ? 孫悟空?
何それ?」

「あぁ、奏は分かんなくていいから。」

「は?」

「さ、食べようぜ!」

そう言うと、ゆうくんは、とってもおいしいお料理をぱくぱくと食べ始め、私もつられてお腹いっぱい食べたのだった。

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