優しい音を奏でて…

「ハンバーグにしようと思うんだけど、いい?」

「っ!!
いいっ! 大好物!
嬉しい〜!!」

「ふふっ。」

目をキラキラさせて喜ぶゆうくんを見て、思わず、

かわいい

と思ってしまった。


材料を冷蔵庫から取り出して、料理を始めようとすると、

「手伝うよ。」

とゆうくんがキッチンに入ってきた。

「じゃあ、サラダお願いしていい?」

とレタスを指差すと、

「おっけー。」

と流水で洗い始めた。

玉ねぎが苦手な私は、いつものように目を閉じて玉ねぎを刻む…けど、それでも目にしみて涙が止まらない。

「奏!」

ゆうくんの大きな声に驚いて手を止めると、後ろからそっと包丁を取り上げられた。

「危ない。何やってんの?」

静かで低い声がゆうくんの怒りを表しているようで、怖かった。

「大丈夫だよ。私、玉ねぎはいつも目を瞑って
切ってるから。
無駄に目が大きいから、余計にしみるのかなぁ。」

と笑って見せた。

「ダメ。
玉ねぎは俺が切る。」

「えぇ〜!?
ほんとに大丈夫だから。」

「絶対、ダメ!」

ゆうくんは全く包丁を返してくれない。

はぁ………
仕方ない。

「ゆうくん、玉ねぎ、お願いします。」

「はい。」

もういつもの優しいゆうくんだ。




1時間後、私の手料理ではなく、2人の共同作業の夕食が完成した。

ゆうくんは、

「おいしい。」

と言って、60分かけた料理を10分で平らげてしまった。




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