優しい音を奏でて…
山本くんから逃れようと暴れてみたけど、彼の腕はビクともせず、されるがままだった。
どれ位の時間が経ったのだろう?
数秒だったのかもしれないし、1分以上あったのかもしれない。
ようやく私を解放してくれた山本くんは、呂律が回らない口で、
「たちばなさんが好きです。
付き合ってください。」
と言った。
私は、何も答えられず、そのまま走って改札を抜けると、電車に飛び乗って1人寮に帰宅した。
山本くんは、その後も何度も私に思いを告げてくれたが、私はその都度、断っていた。
「ごめんなさい。
ありがとう。
でも、何度、言われても、忘れられない人が
いるから…。」