優しい音を奏でて…


「………知らなかった。」

葵ちゃんから見たゆうくんの話は、初めて聞く内容だった事もあり、にわかには信じ難かった。

「あくまで私の見た感じだから、優音が
本当は何を思って、どう感じてたかは、本人に
聞かないと分からないわよ。

それは、奏ちゃんが、自分で優音にぶつかって、
確かめていらっしゃい。」

「………はい。」

私はミルクティーのカップを口にして、少し心を落ち着けようとした。

「優音はきっと、奏ちゃんに想いを伝えない
まま諦めた事をとても後悔したと思うの。

だから、今、あの子は必死で奏ちゃんに想いを
伝えてるんだと思うわ。」

「……… 」

「先週、優音が私と奏ちゃんとのデート
横取りしたじゃない?

ちゃんと自分の気持ち伝えられるように
なったんだなぁ…って思って、私、ちょっと
嬉しかったのよ。」

「だから、あんな恥ずかしい事、平気で口に
するのかなぁ?」

私が1人呟くと、一瞬、葵ちゃんの目がキラキラと輝いた気がした。

「何? 何?
優音ってば、どんな事言うの?」

「あっ、いえ、それは………

あ、そうそう。
葵ちゃん、今日、ゆうくんはきっと
プレゼントを用意してくれてますよね!?
私、何も用意してないんです。
ゆうくん、何をあげたら、喜ぶかなぁ?」

「ふふふっ
ごまかしたわね。
何でも喜ぶわよ、奏ちゃんがくれる物なら。
それこそ、どんぐりだって、松ぼっくり
だって。」

と、葵ちゃんは笑った。

「えぇ〜!?
それじゃあ、何の参考にもならない。」

と私が不満を漏らすと、

「1番は、奏ちゃんだと思うけどね。」

と言って、葵ちゃんは、今日1番の笑顔をしてみせた。

「っ!?
それは、ムリ!!」

「ふふふっ」

葵ちゃんは楽しそうに笑った。


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