優しい音を奏でて…
ゆうくんは腕をほどいて、私の顔を見た。
「1回目は、大学3年の時。」
ゆうくんは黙って聞いていた。
「突然、恭子から電話があったの。」
「!」
思い当たる事があったのか、ゆうくんは表情を曇らせた。
「ゆうくんと付き合う事になったって。」
「………失恋って事は、その時、奏は、俺の事
好きだったって事?」
複雑な表情でゆうくんが言った。
「恭子が、ゆうくんの事好きだったから、
ずっと言えなかったけど、私はゆうくんが
好きだったよ。」
ゆうくんはうな垂れて言った。
「あの時、河合に言われたんだ。
奏には俺じゃなくて他に好きな奴がいるって。
だから、とりあえず、お試しでも気晴らしでも
いいから、付き合おうって。」
「!」
「気が動転して下を向いたら、頷いてOKした
事になってて。
でも、1週間後にちゃんと断ったよ。」