優しい音を奏でて…
午前11時。
─── ピンポーン ♪
ゆうくんが実家へ帰るついでに、私も実家へ送ってくれる事になっていた。
元日に帰り、3日にマンションへ戻る予定だ。
「ゆうくん、ありがと。」
迎えに来てくれたゆうくんにお礼を言って、部屋の鍵をかけようとすると、そのまま左手で肩を引かれ、顔の向きを変えられた。
「奏…」
ゆうくんが私の名前を囁くと、唇が塞がれた。
「んっ…」
ゆうくんの腕を押して逃れようとするが、全く動かない。
次第に力も入らなくなり、私はそのまま彼の腕にしがみつくようにキスを受け入れた。
しばらくしてゆうくんは、私の唇を解放すると、私の目を覗き込んで、にっこりと微笑んだ。
「ごめん。
奏がかわいすぎて、我慢できなかった。」
「もう! ゆうくん、ここ廊下だよ。」
私が呆れたように言うと、ゆうくんは、フッといたずらっ子のような笑みを浮かべて言った。
「廊下じゃなきゃいいんだ?」
「っ!!
もう、知らない!」
私が拗ねると、ゆうくんは私の手を取った。
「ごめん。
どうしよう?
拗ねる奏がかわいくて、もう1回したく
なった。」
「んもぅ!!」
怒ってたはずの私は、思わず笑ってしまった。
そのまま私は、ゆうくんと手を繋いで駐車場へ行き、実家へと送ってもらった。