ダドリー夫妻の朝と夜
 エミリアは、縦横無尽に己の内を外を這い回るアーサーに、健気に応えようとした。

 どうすれば正解なのかは、さっぱりわからなかったけれど、やがてアーサーの動きが止まり、荒く大きな息をついたとき、彼は微笑んでくれた。

 その顔を見る人がいれば、エミリアでなくても彼が笑っていることがわかっただろう。それくらい、はっきりとした笑みを彼が浮かべるのは奇跡的だった。

「わたくし、アーサーさまに、もっと笑っていてほしいわ」

 エミリアがそう呟くと、途端にアーサーは鉄面皮に戻った。代わりのようにエミリアが、頬をほころばせる。

「でも、ほかの方に、そのお顔をみせてほしくないの」

 下がったエミリアの眉毛を、アーサーがそっとなぞる。

「そう難しいことではない。君の隣で、わたしが笑えばいいだけだ」

「どうしたら、笑ってくださる?」

「君がわたしを愛してくれれば」

「そんなこと……ひと目お会いしたときから……ずっと、そうでしたのに……」

 中途半端に開いたまま止まったエミリアの唇に、アーサーは誓いのキスを落とす。

 何を彼が誓ったのかを聞かぬうちに、エミリアは深い眠りに落ちていた。



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