ダドリー夫妻の朝と夜
ふわりと鼻先を掠めた、微かに甘い香りでエミリアは目を覚ました。
「起きたか」
「ん……と、おはようございます……?」
「ああ、おはよう」
穏やかに微笑み返したように見えたのは、エミリアの夫。夫であることを昨夜証明してみせたアーサーだった。
パチリとエミリアが長い睫毛で瞬きする間に、幻のような微笑はわずかな欠片も残らず消え去っていた。
ただ、アーサーから漂う柔らかな空気は変わらなかった。これまでエミリアが感じ取ったことのない親密で甘ったるい雰囲気に、エミリアはもぞりと体をくねらした。
ひどく恥ずかしくて、うれしくて、誇らしい。世界中に、この素晴らしい男性がわたくしの夫なのだと叫んで回りたかった。
「紅茶を。砂糖は一つで良かったね? ミルクは? 蜂蜜も用意させた。最近、君が使っていると聞いたよ」
「ええ、蜂蜜とミルクをお願いします」
先程の良い香りは、紅茶のようだ。
寝起きのぼんやりした頭では自制も効かず、エミリアはうっとりとアーサーにみとれた。
パリッとしたシャツにウエストコートを着込んだアーサーはベッドに腰掛けると、銀の盆の上で美しい花柄のカップにミルクと紅茶を注いだ。銀のスプーンでそれをかき混ぜると、エミリアに差し出す。
カフスはまだ留めておらず、折り返したシャツからがっしりした腕がのぞいていた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
もたもたと起き上がったエミリアは、自分が何も身につけていないことに気づいて息を呑んだ。慌ててシーツを巻きつける。
かといってカップを手にしたままのアーサーを待たせるわけにもいかず、何とか腕でシーツを押さえ込むと、エミリアは恐縮しながらカップを受け取った。
「起きたか」
「ん……と、おはようございます……?」
「ああ、おはよう」
穏やかに微笑み返したように見えたのは、エミリアの夫。夫であることを昨夜証明してみせたアーサーだった。
パチリとエミリアが長い睫毛で瞬きする間に、幻のような微笑はわずかな欠片も残らず消え去っていた。
ただ、アーサーから漂う柔らかな空気は変わらなかった。これまでエミリアが感じ取ったことのない親密で甘ったるい雰囲気に、エミリアはもぞりと体をくねらした。
ひどく恥ずかしくて、うれしくて、誇らしい。世界中に、この素晴らしい男性がわたくしの夫なのだと叫んで回りたかった。
「紅茶を。砂糖は一つで良かったね? ミルクは? 蜂蜜も用意させた。最近、君が使っていると聞いたよ」
「ええ、蜂蜜とミルクをお願いします」
先程の良い香りは、紅茶のようだ。
寝起きのぼんやりした頭では自制も効かず、エミリアはうっとりとアーサーにみとれた。
パリッとしたシャツにウエストコートを着込んだアーサーはベッドに腰掛けると、銀の盆の上で美しい花柄のカップにミルクと紅茶を注いだ。銀のスプーンでそれをかき混ぜると、エミリアに差し出す。
カフスはまだ留めておらず、折り返したシャツからがっしりした腕がのぞいていた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
もたもたと起き上がったエミリアは、自分が何も身につけていないことに気づいて息を呑んだ。慌ててシーツを巻きつける。
かといってカップを手にしたままのアーサーを待たせるわけにもいかず、何とか腕でシーツを押さえ込むと、エミリアは恐縮しながらカップを受け取った。