ダドリー夫妻の朝と夜
 医者の元で働いていた経歴を持つ侍女は、エミリアが嫁ぐ際に雇い入れた者で、女主人の健康管理を第一に考えるよう言い聞かせている。

「お目覚めのときには、ご気分は良さそうでございましたけれど」

 布巾で手を清め、エミリアに断りを入れた侍女は、妻の額に手を当て、もう片方の手で手首を掴んだ。

「……お熱はなさそうでございます。脈は少し早いようですが」

「よく調べろ」

 なんと、侍女は己の額をエミリアの額に擦りつけた。

「何をしている!」

「これが一番手っ取り早いんでございますよ。ええ、やはりお熱はございません」

 きっぱりと言い切った侍女は、不遜な視線を一瞬だけ上げると、すみやかに下がった。

「少しでも体調に変化があれば、医師を呼べ」

「心得ております」

 エミリアは、額にかかった髪を撫でつけている。

 アーサーが直してやりたかったが、その必要はなさそうであった。

 侍女の荒っぽい診察には憤りを感じたが、アーサーも夫としてその方法を覚えておくべきであろう。

 次は、自分がまず先に確認することを決意する。

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